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わいわいと話しながら入ってきたのは、高校生くらいの少女たちだ。ユラの読み通り、バーンハートがここで花薬を買って、誰かに贈ったということはすでに噂となり、学校中に広まったのだろう。ミーハーな彼女たちを非難するつもりはない。自分だって、憧れの人が身近なところで買い物をした、という噂を聞けば、ちょっと覗いてみるくらいのことはするだろうと思うのだ。
一方で、おかしな反応を見せたのはマドックだった。彼女たちに気付くと髪をぐしゃりと崩し、背中を丸めた。
「あれってレッキーじゃない?」
「え、文学オタクの?」
「そうそう」
遠慮を知らず、声の大きさを考えないティーンエイジャーの言葉は、マドックにも届いているらしい。けれど、その顔には苛立ちが全面に塗りたくられている。
「レッキーさん。準備ができました」
声をかけると、マドックは彼女たちに自分の顔が見えないように座り方を変えた。
「へえ、彼も花薬買うんだ」
「違うんじゃない? 見た感じ、店員さん花薬持ってないっぽいし」
「じゃあ、何?」
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