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「知るわけないじゃん、そんなこと。それより見てよこの花薬、20フロスだって。私でも買えそうな値段。えっと、効果は……」
すぐにこちらへの興味を失った二人組は、また棚の花薬を物色し始める。あまりにもはっきりした切り替えに、感嘆すら覚えてしまう。一方のマドックはというと、ぎりぎりと音が聞こえてきそうなほど、ジーンズの生地を強くつまんでいる。
「レッキーさん、大丈夫ですか?」
マドックは据わりかけている目でユラを見る。
「大丈夫です」
さすがのユラも、マドックのちぐはぐさに少し怖くなった。冴えない見た目をして、クラスメイトと思しき人には小ばかにされており、確かに怒りを覚えているはずなのにそれを本人には見せようとしない。気弱だからこそターゲットになっていそうなのに、目の前にいるマドックは全く気弱さを感じさせない。だというのに、反論をしたり現状を変えようとしたりはしていないようだ。
「こちら、50フロスのお返しです。」
お金と一緒に、バーンハートに必ず渡すという即席の誓約書と領収書を差し出す。
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