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「『カランコエ:たくさんの小さな思い出』ですね。お代の前に、効能を詳しく説明させていただきますね。あちらへどうぞ。」
自然なしぐさで、カウンターの隣にある、対面式の席に案内する。マリーはユラを一瞥してから、客のあとに続いて席に着く。カウンターでの店番をしていろということらしい。ユラはおとなしく指示に従う。繊細な作業が一段落したこともあり、しばらくは、とカウンターの内側に用意された席に座る。
そのまま他の客が来ないことを願いながら、マリーと老婦人の会話を盗み聞いた。口下手で人見知りなユラとしては、店番を任された日には泣きたくなるほど心細いのだ。
「申し遅れてしまったけど、私はローザと言います。花薬のお話をする前に、聞きたいことがあるのだけれど、よろしいかしら?
「もちろんです。どうされましたか?」
「こちらのお店の名前、クッカ・キエリって、どういう意味が込められているの?」
「北の国の言葉で花言葉という意味です」
「そうなの。花薬のお店にぴったりの名前ね」
ローザはにこにこと笑顔を浮かべて満足そうだ。そうして、今度こそ花薬の話を始めた。
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