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「なあ、君って同じ学校のマドックだよな? そういうキャラだったっけ?」
「なんだよあんた。手伝うんじゃねえんなら、さっさとおうち帰んな。もうすぐ市場の人らが来ちまうから開店準備の邪魔になっちまうだろうがよぉ」
何か言い返す前に、舎弟の一人、グレンがバーンハートに絡む。「おっと」と言って、降参するように両手をあげると、マドックに向かって微笑んだ。
「また学校でね」
去っていくバーンハートの背中を見送るマドックの心臓は騒がしくなる。
言葉遣いの荒い自分。善行を美徳とする自分。舎弟を持つほどけんかっ早い自分。
どれが本当の自分なのか、分からなくなっていた。
一つに寄せようと選んだのが、善行を美徳とする自分だった。学校では目立たないようにおとなしくしていたが、これで目論見が崩れ去ってしまうことになる。
マドックは空に向かって罵倒しそうになるのを、必死に抑えた。
また明くる日、今度はバーンハートが憤慨した様子で来店した。
「店員さん、どうしてマドックの返金依頼を承諾したんですか?」
詰め寄らんばかりの勢いに、ユラは気圧されそうになりながらも、応接セットへ案内しつつ返答する。
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