友愛の先に

24/56
前へ
/195ページ
次へ
「……いえ、あんなにたくさんの人に囲まれているのに、友達がいないとは思えなくて」  今度はバーンハートがきょとんとした顔でユラを見る。 「え、でも俺の見た目だけで寄ってきている人は友達じゃないですよね?」  あっけらかんと言い放ったバーンハートに、ユラは今度こそ開いた口がふさがらなかった。その考え方が間違っているとは思わない。しかし、少なからず好意を持って接している人だって中にはいるはずだ。 「みんなことが嫌いなわけじゃないですよ? ただ、上っ面しか見もせず、上っ面しか見せてくれない人は友達じゃないだろうなと思うだけで……」  なおも表情を変えず、バーンハートは自分の価値観をユラの前に積み上げていく。難攻不落の城塞に、鈍らの剣で挑まなければならないような気持ちになる。  バーンハートの価値観は否定できない。けれど、ユラにはその価値観をどうしても受け入れがたいものに感じていた。 「だから、偶然とはいえ、普段と違う面を見れたマドックとは仲良くなってみたいんです」  冷酷とも言える考えを披露した者と同一人物と思えないほど、暖かくまっすぐな目をユラに向ける。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

144人が本棚に入れています
本棚に追加