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「今はそれで大丈夫です。少しずついろんな考えを理解していけばいいんですよ」
そう言ってユラは微笑む。バーンハートと関わってから、初めて会話の主導権を握れたような気がした。ユラは立ち上がって、マドックが返しに持ってきたそのままの状態の花薬を取りに行く。包装だけは少し直し、バーンハートのもとに戻る。
壁を作られた状態でしか関わりのないマドックのことは、正直なところほとんど分からない。けれど、マドックの壁は目の前の青年であれば打ち破ることができるのかもしれない。ほんの少しだけ、ユラは期待をしてバーンハートに紙袋を握らせた。
校内に講義終了のベルが鳴り響く。各教室から学生たちが出てきて、無駄話に花を咲かせている。
学校の人気者、バーンハート・ワイエスから呼び出しをされ、プレゼントを渡されてしまった日から、マドック・レッキーの苛立ちが余計に募りはじめた。
「ねえ、バーンハートが花薬渡したのってあのマドックなんだって。しかもマドックのやつ、そのプレゼント捨てたらしいわよ。知ってた?」
「うっそ~! 信じられない!」
「おい、バーンハートのやつ、マドックにプレゼントしたらしいぜ」
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