友愛の先に

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 いっそさらけ出してしまおうと思った。捨て鉢な考えかもしれない。けれどそれで離れていけばまた平穏に戻るし、受け入れてもらえたら……、嬉しいかもしれない。  マドックに打算的な考えがないわけではない。学校で一番人に囲まれている人間が、悪くない反応を見せてくれたとしたら、『普通』に近付けているという指標になる。  鼻歌を歌って帰っていくバーンハートと別れ、マドックはスマートフォンを取り出した。  夏の市場では、生花よりも花を使った菓子が多く並ぶようになる。夏の暴力的なまでの日差しは、容赦なく切り花の命を短くしてしまうからだ。並べられた菓子も、ゼリーやジェラートなどの涼やかなものばかりになっている。  花屋とカフェを両立している者は多く、ユラはそうした人たちの器用さを尊敬している。花薬一筋と言えば聞こえがいいかもしれないが、それ以外に得意なものがないのだ。  一通り花の仕入れを終えたユラは、途中の屋台で見かけたジャスミンティーのゼリーを買った。パラソルを併設したベンチに座って汗をぬぐう。一度拭いても、あとからじわじわと汗が流れてくることは止められない。
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