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具体的な場所が出てこない説明に、ユラとマリーは戸惑った。市場のこの店、ではなく『どこか』では見当がつけられない。
「その、どこかというのは……?」
具体的な場所を聞き出そうとユラが恐る恐る聞くと、ローザはゆっくりと首を横に振った。
「分かりません」
ふぅ、と小さくため息をついたローザは、胸を手で押さえる。
「あの人は私よりも4つ年上だった。だから出会った場所のことを明確に覚えていました。でも私はそのとき泣きじゃくっていたし、小さな頃のお話だからはっきりと覚えていないの」
「もしかして、少し前に市場を歩いて回られていたのはその場所を探そうとされていたんですか?」
ユラの言葉にローザの目が丸くなる。
「見られてしまっていたのね……。カランコエの花薬の効果で、その場所を思い出せないかって考えて歩いていたんです。結局、思い出せなかったのだけれど……」
がっくりと肩を落とした後、ローザは慌てた様子で手を振る。
「ごめんなさいね、あなたたちの花薬が悪かったわけじゃないのよ? 多分、本当に私の頭に残っていなかったんだと思うわ。……あの人の最後の贈り物が分からないのは残念だけど」
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