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5つある目覚まし時計が部屋中に鳴り響く。
針は全て9時15分を指していた。
ベッドの上には、そんな音が聞こえてないかのように爆睡している男がいた。
寝相が悪いのだろう。
男の上にあったはずの布団はベッド脇に落ちていた。
玄関のドアが開く。
鍵はかかっていなかった。
「どうして寝てられるの?」
女がそう言って、靴も脱がず部屋の中に入って行った。
そして5つ全ての時計を止めた。
「良助起きろー。」
女は男の頬を左右に引っ張って言った。
微動だにしない男を見て、女は近くにあった目覚まし時計を手に取ると、男の頭の上で手を放した。
鈍い音がした。
「う…ん。けいちゃん?」
男の目が開き、視界に女の仏頂面が入る。
「そんな顔してどうしたの?」
「何言ってんの!今日は私を…、京都を案内してくれるって言ったじゃん。」
男は少し考える。
「ああ。そうだったっけ?でも俺風邪かも。…頭がガンガンする。」
「気のせいだよ。」
女は男の隣で寝ている目覚まし時計を横目で見つつ言った。
男は鷹野良助
女はその彼女の清水佳子だった。
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