桜 真夏の夜の花火大会

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期末テストと言えば…… 真尋との電話を切って、ふと桜は菫の顔を思い出す。 菫ちゃんのテスト結果は去年に比べたら下降傾向で、教育熱心とまではいかないものの、それなりに勉強に口煩い両親が菫ちゃんを呼び出して、食卓で家族会議をしていた。今までは自分が呼び出される方だったのに。 今回の桜の成績は塾に行った甲斐もあって上り調子で、両親は手を叩いて喜んでいた。 亜貴が親切に根気強く教えてくれたからだ。それだけは間違いないと桜は確信していた。苦手な数学も桜が理解できるところまで戻って教えてくれたのだ。 そんな亜貴にお礼したくて、桜は昨夜のうちにチョコレートマフィンを用意していた。今日も講義の前に自習室で勉強をする約束をしていた。 どうも塾の中では桜と亜貴は付き合っていると噂されているようだったが、桜にとってそんな噂は大したことではなかった。亜貴は自分が真尋に惹かれていることを知っているし、自分も亜貴が紫音ちゃんを大切に思っていることを知っている。 周りがどう思うと、自分達が自分達のことを理解していたらそれでいいと、最近は思えるようになっていた。
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