菫 一緒にいたいの

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多数決の結果、クラスの出し物はお化け屋敷になって、成海が上手にクラスの分担まで行ってくれた。おどかし方を考える係、客引き用の看板を作る係、中の仕掛けを作る係、お化けの衣装を作る係、当日のメイクを担当する係と。 成海が事細かに役割を分けたのには理由がある。菫は「明日までにやりたいことを決めておいてね。」とクラスに声をかける成海に、この人には敵わないと思い始めていた。 成海はクラスの分担を増やして、ひとつのグループの人数を減らすことで、ただやらされているって思っている子たちも、率先してできるようにしようと企んだのだろう。「やらされているだけ。」と呟いた如月さんの声を拾ったのだ。他にも同じ思いの子がいると思って。成海は自分なんかよりもずっと周りの人をまとめるのが上手だ。 だけど……一仕事を終えて教壇から降りる成海の顔はどことなくしんどそうで、無理して笑っているようにも見えた。 菫は机の横にかけた鞄からスマホを取り出して、机の下でメッセージアプリを開いた。 [どこか行く?授業をエスケープして。] ついこの間、担任の浅間先生に怒られたことを忘れたわけではない。でも、成海のことが何となく気がかりだった。
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