482人が本棚に入れています
本棚に追加
❇︎❇︎❇︎❇︎
「エスケープというか、俺は帰るけど一緒に来る?」
成海が菫に声をかけてきたのは、3時間目が終わってすぐだった。メッセージの返信は菫が送信してすぐに来てはいた。その時は[ありがとう。]というお礼だけだった。
「帰るの?」
「何となく。一人になりたい気分。でも、すーちゃんなら一緒でもいいよ。」
あっ……。菫は成海と目が合った瞬間にその顔だと思った。すごく冷めた表情。いつもの笑みを絶やさない成海はそこにはない。
「私も帰る。」
「じゃあ廊下で待ってる。なるべく早くね。次の授業のタナハッシーが来たら面倒だから。」
成海が出て行く後ろ姿を見つめながら、菫がガサガサと必要な物を学生鞄に押し込んでいたら、背後からシャーペンで背中を突かれた。
「帰るの?」
戸惑いを隠しきれず、困惑しながら藤澤が尋ねてきたが、菫は戸惑うこともなく素直に頷いた。
「また明日。」
菫が簡単に学校を抜け出すタイプではないと思っていた藤澤はさらに戸惑いの色を顔に滲ませていた。
菫は藤澤に手を振り、芽衣と華奈には[ちょっと帰ります。今日は一緒にご飯できなくてごめんね。]とメッセージを送っておいた。
最初のコメントを投稿しよう!