菫 一緒にいたいの

20/58
前へ
/642ページ
次へ
成海は廊下に座り込んで菫を待ってくれていた。数分後には授業が始まるので、廊下には二人以外に人の姿はなかった。 「大丈夫?」 菫の第一声は成海を心配する言葉だった。廊下に座る成海は能面のようだった。去年、伊勢谷先生に頼まれたことを思い出す。成海のことをよろしくって。あいつは見た目より脆いところがあるからって。 「うん。帰ろっか。」 帰ろっかというのは、成海の家にだよね?成海は辺りを見渡して、棚橋先生がやって来ないかを入念に確認している。 「俺らが体調不良で帰ったことは、クラスのやつが担任の純ちゃんに言ってくれるだろうし、タナハッシーが来る前に消えちゃおっか。」 成海が立ち上がって手を差し出したので、菫は素直にその手を握りしめた。 「帰ろう。成海の家に。」 一瞬、成海は目を丸くして菫を見たが、ふっと微笑して、菫の手を引いて歩き始めた。
/642ページ

最初のコメントを投稿しよう!

483人が本棚に入れています
本棚に追加