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成海の家は菫が以前来た時と変わらない。高層マンションの最上階。汚れひとつない片付けられ過ぎたリビング。母親がこだわって設置したアイランドキッチンは、相変わらず使われた痕跡はない。
成海が部屋に着くなり、ブレザーを革張りのソファーに脱ぎ捨て、ネクタイを緩めて、カッターシャツのボタンを外し始めたものだから、菫は
「ぎゃっ!」
っと悲鳴をあげて、慌てて成海に背を向けた。
「着替えるなら先に言ってよ!」
信じられない。躊躇いもなく脱ぐのだから。こっちは男の子の着替えなんて、普段はほとんど目にしないから全く免疫がないのに。
「あー……」
成海は全てを把握したのか、菫に対してにやりと笑って、はだけたシャツのまま、ずいっと菫の顔に自分の顔を寄せてきた。
「ついに俺にドキドキした?」
「ば、バカじゃないの!ドキドキなんてするわけないでしょ!」
菫が顔を真っ赤にして反発した途端、成海はゲラゲラと笑い出した。
「な、何よ?」
「いやぁ、相変わらずすーちゃんは可愛いなあと思って。」
「なっ……」
「すーちゃんも着替える?制服、しんどいでしょ。」
「着替えるって、私、着替えとか持ってない。」
部活の練習着は、今日の朝練の後から部室に置きっ放しだ。また放課後も着ようと思っていたのだ。
「俺のパーカーを貸してあげるよ?スカートは我慢して着といてもらわないと仕方ないけど。」
「じゃあ借りる。」
制服で一番しんどいのは、やはりカッターシャツだ。肩が凝るし首の辺りも苦しい。
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