桜 真夏の夜の花火大会

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今日は8回目だった。プツリとコールの音が途切れて 「もしもし……?」 と真尋のいつも以上にハスキーな声が桜の耳元で響く。それだけでベッドで暴れまわりたくなる。大好きな人の声が自分のすぐ傍でするのだ。こそばゆくてたまらない。 「ま、真尋、朝だよ。おはよう。」 「……うーっ……」 反応が鈍い時の真尋はまだ寝ぼけている証拠だ。普段なら絶対見せないような無防備な姿だ。 「昨日も遅かったの?」 「……バイト終わりに曲書いてて……寝たのが4時だったかな?」 「4時!?」 ってことは、2時間睡眠?それはさすがに眠たいだろう。もうすぐライブが近いこともあって、真尋も他の3人も最近は精力的に曲を書いている。 「今日の時間割なんだっけ?」 「朝一が数学で……世界史があってその次が古典かな……。」 「あー……古典ねぇ……。」 その反応!絶対にエスケープするつもりだ。 「真尋、古典を抜け出すつもり?棚橋先生が激怒……」 「桜も来る?」 「……い、行く……。」 ごめんなさい、棚橋先生。桜は学校の方に向かって深々と頭を下げた。3時間目は私も真尋も欠席します。 真尋に誘われて断ることなんてできない。期末テストも終わって、学校も後10日程で夏休みだ。授業も消化するための復習の内容が多く、エスケープしたからといって、付いていけなくなることはない。
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