桜 真夏の夜の花火大会

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綺麗な寝顔。 桜は手を思わず真尋の頬に触れた。 学校でのイケメンナンバーワンは断トツで宮田くんだけど、真尋の隠れファンは今だに多い。あの「真尋先輩」と呼んでいた後輩たちだって、今でもカッコいいとは口にしている。 触れたくなるの。時々、この人の唇に。 自分が可笑しくなったのではないかと何度も思った。今まで何人かの人と付き合ってきたけど、自分からそんな思いを抱いたのは初めてだった。それなのに、いざ真尋に触れられそうになったら、逃げてしまう自分がいる。パニックなのだ。頭と体がバラバラで、心もついていかなくて、結局じっとしていられなくて逃げてしまう。 こんなに誰かを好きになったのは初めてかもしれない。 桜は制服のポケットから以前はキャンディーが入っていた手のひらに乗る程度のリボン型の缶かんを開けた。中には真尋からもらったピッグが入っていた。お守りとして毎日持ち歩いていた。勉強が嫌になった時とか、部活で後輩を指導しなくてはいけないけど、緊張して上手く話せない時とかに、この缶を開けたら真尋の頑張っている姿を思い出せる。
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