桜 真夏の夜の花火大会

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「ただいま。」 菫の声がして、桜はカレーを混ぜていたお玉を手にしたまま、玄関に菫を迎えた。 「おかえり。」 「ご飯、今日はカレー?」 「うん!菫ちゃんの大好きなチキンのトッピングだよ。」 「うん……。」 「あ、お母さんとお父さんは残業で少し遅くなるって。」 数分前に桜のスマホに二人からメッセージが届いていた。 「うん……分かった。」 菫ちゃん、やはり元気がない?いつもよりも表情も暗いし口数も少ない。朝に家を出る時もどことなく表情が沈んでいたっけ。 「菫ちゃん、あの……」 「何?」 「何でもない。」 「手を洗って着替えてくるね。」 私が大丈夫?なんて聞いても菫ちゃんは「平気。」としか口にしない。本当はもっと色々なことを話して欲しいと思うけど、菫ちゃんに頼りにされる程の双子に私はまだなれていない。
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