桜 真夏の夜の花火大会

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桜は菫と静かな夕食の時間を過ごした。菫の口数は少なく、なんとか話題を見つけたい桜だったが、菫にかけるべき言葉が見当たらなかった。以前なら勉強の話とかを聞くこともできたが、今は類型も違ううえに、菫の期末テストの結果がイマイチだったことも知っているので、勉強の話はタブーのように感じた。 唯一、二人の沈黙を埋めてくれたのはくろで「みゃー。」と鳴きながら餌を食べてくれていたので、「今日はよく鳴くね。」と話題にすることができた。 「桜はどうするの?安藤くんのライブ。一人で行くの?」 そう菫から桜に話しかけてくれたのは、カレーを半分ほど食した時だった。 「う、うん。終わったらご飯を食べに行こうって言ってくれていて。」 そのまま泊まってもいいよと言ってくれた。礼央達も泊まるだろうからって。 「菫ちゃんは?宮田くんと来てって言われたんじゃないの?」 「うん。すごく楽しみにしてるの。文化祭で歌っている時も素敵だったし。」 桜を見つめる菫の目に映る光は、どこか期待に満ちていた。彼の歌っている姿を見たら、何かが変わるのではないかという。
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