桜 真夏の夜の花火大会

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「花火は?行かないの?」 桜が尋ねると、菫は静かに首を振った。 「その日は部活があるし、大会が終わるまではいいかなって。」 菫が少しストイックな面があるのは昔からだった。大会前には減量をしたり、朝練に積極的に参加したりする。他にも遊びに行くことを控えたりする時もあって、桜はさすがだなという思いでいつも見ていた。 「桜はどうするの?」 「クラスの友達に誘われていて……」 「そう。楽しんできてね。」 菫ちゃん……笑う姿もどこか苦しそう。私に出来ることなんて限られているとは思うけど、力になりたいのに。 「ねぇ、菫ちゃん!買い物行かない?夏休みになって、菫ちゃんの大会が終わったら。また春の時みたいにコーディネートしたいの!」 これぐらいしか自分には出来ない。菫は唐突な桜の申し出に一瞬戸惑う様子を見せたが、小さく二回頷くと笑みを見せた。 「いいよ。せっかくだし桜に選んでもらおうかな。」 「わーい。じゃあまた日にち決めようね。」 桜にとって菫が笑いかけてくれることが嬉しくて、例え昔程、一緒にいる時間が減ったとしても、それが自分自身を安心させるパーツの一つであることに変わりはなかった。
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