桜 真夏の夜の花火大会

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亜貴の紹介で真尋がマイクを握り直し、新曲の紹介をした。今いるここと見えない未来との狭間で、彷徨う思いを書いたと言った。自分たちもステージに立たせてもらっているけど、それでも悩んでこれでいいのかって葛藤して、でも音楽が好きで、音楽から離れることはできないから進むしかないって思っていると。 「だから、また遊びに来てくれると嬉しいです。今日は本当にありがとうございました。」 桜の耳に届いた新曲は地を這うようなベースの音から始まって、そこに真反対の空を裂くようなギターの音が合わさり、その二つをまとめるように、ドラムが音を刻んだ。真尋の声はいつもより重いのに響いた。 何も見えないこの先を何処へ行く。誰と出会い何をするだろう。彷徨って彷徨ってそれでも僕は行く。 そう歌った時の真尋の顔は今までと別人で、桜は胸のあたりを掴まれ一気に呼吸が苦しくなっていた。
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