桜 真夏の夜の花火大会

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「それは俺からもお願いします。」 桜が振り返るとそこには真尋の姿があった。礼央達はいなくて、真尋はライブの時に来ていた物とは別のTシャツとジーパンという服装に、ケースに入ったギターを背負っていた。 「安藤、久しぶり。お疲れ様。」 伊勢谷に真尋は一礼すると、先程の自分の発言を補足するように口を開いた。 「成海に会いに行ってやって欲しい。あいつ、今、かなり不安定だと思うから。何とかやれているのは、委員長の存在があるからです。」 「……分かった。二人の話はちゃんと心に留めておく。それで、安藤は?どうなの?元気にしてた?」 「はい。音楽ばかりやってましたけど、桜の助けもあって学校には通ってます。」 真尋にそんな風に言われるなんて思ってもいなくて、桜は耳の先まで赤く染めて俯いた。 「なら良かった。今日の君たちバンドの姿を見て思ったよ。きっとどこまでもいけるって。」 「……ありがとうございます。俺も、今日、初めてライブが楽しいって思えたんです。今まではガラでもないけど、結構緊張してて、楽しいなんて感じるのです余裕すらなかったのに、今日は観客の様子も自分の声の響きもメンバーの鳴らす音とかも鮮明に感じられて、楽しいって心から思えました。」 真尋……すごくいい顔。 二人のやり取りを見ながら、桜は嬉々とした真尋の表情が自分にとっても嬉しいことのはずなのに、広い草原に一人佇んでいるような気持ちになっていた。 真尋が知らない人になっていく。私の知っている安藤真尋とは別人のmorning glow としての安藤真尋に。
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