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綿あめを買って、この人混みの中で食べながら歩くのもと言うことで、桜は丈に促されて、道の傍にあるう公園に入ってベンチに腰を下ろした。公園にはさすがに人もいなくて、街灯が日の沈んだ公園のブランコや滑り台を照らしていた。
「二人とはぐれちゃったね。一応、猛にメッセージを送っておくか。」
はぐれたわりには呑気な丈に、桜は最初からそのつもりだったのではないかと一瞬疑った。走り出した時も、この公園に座ろうと言った時もまさか全部計算だったのではないだろうか。
「さ、食べよう。食べて猛たちを探して花火を見なきゃ。」
「うん。」
そんなことないかと思い直して、人差し指と親指で綿あめをちぎって口に運んだ。丈は隣でガブリと綿あめにかぶりついている。その姿があまりにも豪快で、桜は思わず声をあげて笑ってしまった。
「何?」
「男らしいなって思って。」
「桜ちゃんは綿あめ食べている姿も絵になるね。」
「もう揶揄わないでよ。」
桜がやだやだと顔をしかめると、丈は「本気なのになあ」と呟いて空を仰いでいた。
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