桜 お守りに欲しいの

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再び屋上に戻ってきた真尋はパックの苺ミルクとオレンジジュースを手にしていて、苺ミルクを桜に手渡した。 「ありがとう……。なんだか懐かしいな。」 桜はヘッドホンを耳から外して、苺ミルクを受け取った。 「俺さ、苺ミルクを見るたびに、桜のことを思い出すんだけど。どうしてくれんの?」 真尋は意地悪く笑って、桜の隣にどかっと腰を下ろすと、オレンジジュースにストローを刺した。 「……。」 どうしてくれんのって……むしろこっちだって言いたい。桜のことを思い出すなんて言い方しないでよと。人の気持ちをかき乱すような物言い。 「アルバム、どこまで聞いた?」 「4曲目まで。」 曲数でいうと、ちょうど真ん中の場所だ。安藤くんは棚橋先生とけっこう長く話しをしていたようだ。 「こういう時はさ、イヤホンの方が便利なんだよねぇ。」 真尋は鞄からワイヤレスイヤホンを取り出すと、片耳だけ桜に差し出した。 「えっと……あの……」 「7曲目をぜひ聞いて。これはヒロさんにしか作れないって思うから。」 ヒロさんというのは、このバンドのボーカルの名前だ。音楽のことが絡むと安藤くんは他への関心が薄くなる。こっちはアルバムを聞きたい思いもあるけど、イヤホンを半分こするってところに、気持ちが持っていかれてしまうのに。 だって、同じ物を二人で分け合っている感じがするじゃん。そしてその感じが自然と二人の距離を縮めてしまう。腕や肩が触れてしまうぐらいの距離に。
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