プロローグ

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春は出会いと別れの季節。新しい教室、新しい友達、新しい先生。新しい環境に慣れるまで日々は流れるように過ぎていく。気が付いたら桜も葉だけになり5月になっていたりする。 菫は寝巻きとしているTシャツとハーフパンツを脱ぎ、深緑のタータンチェックのスカートを履いた。それから、白のカッターシャツを着て、襟元にスカートと同じ色のリボンを結んだ。最後に濃紺のブレザーを羽織って、黒のハイソックスを履いたら完成だ。 この制服を着るのも今日から2年目。最初はリボンを結ぶのに手こずることもあったが、今は鏡を見なくても感覚で結ぶことができる。 菫は自室の片隅に置かれた全身を映せる鏡面でボブヘアーを整えてから、顔と首に日焼け止めを塗って、唇に色付きリップを馴染ませた。 緊張する……。新学期というのはどうも苦手だ。自分は桜のように座っているだけで、人が寄ってくるようなタイプではない。雰囲気が凛々しいせいもあって、最初はいつも周りから少し距離をとられる。だから、まずは自分から動いて、声をかけて、楽しい話をして友達の輪を広げていかなければならない。
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