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「桜ちゃんってさー」
桜と真尋のやり取りを一部始終見ていた丈は、ニタリと桜に笑ってみせた。
「安藤のことが好きなんだね。」
「……。」
「あ、図星?安藤といる時、顔が違うもんね。」
「何それ?」
顔が違う?意味が分かんない。
「恋をしている女の子の顔。顔に書いてるもんね。安藤のことが好きだって。」
「そんなの書いてない!」
否定すればするほど、丈が優勢になるのは分かっている桜だったが、言われっぱなしというのは我慢ができなかった。
「まあ、男の俺でも安藤がカッコいいのは分かるよ。背も高いし、ギター弾けるし、クールだし。でも……」
丈はひょいっと桜が手にしていたアルバムを奪い取った。
「俺はああいう男はあんまり好きじゃないけど。」
「ちょっと返して。」
桜が露骨に嫌な顔をしても、丈には効果がなく、アルバムの表裏を「ふーん。」と言った表情で眺めていた。
「桜ちゃんって、けっこうハードな曲を聞くんだね。それとも、これもあいつの影響?」
「わ、私が好きで聞いてるの!」
桜は力任せに丈からアルバムを奪い返し、鞄に仕舞い込んだ。いつまでも何も知らないのに好き勝手言われたくなかった。
「私、バイトだから行くね!佐伯くんも早く部活に行きなよ。」
「はーい。じゃあ、また明日ね、桜ちゃん。」
このまま無視して立ち去っても良かったのかしれない。でもそれは良心が痛む桜は、丈に小さく手を振って背を向けた。
何なのだこの人!私にかまうな!と、心の中では悪態をついていたが。
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