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「明後日誕生日だって成海から聞いたんだけど。」
前置きもなく単刀直入に真尋が言うと、桜より先に舞香が
「えっ!?そうなの?桜ちゃん!」
と反応した。
「そうなの。実は……」
桜はどちらに対しても曖昧に笑みを見せて頷いた。そんな桜に真尋は溜息をついた。
「何で言わないわけ?」
安藤くん怒ってる?何で?でも、声色からして不機嫌なのは明らかだ。
「明後日の放課後、予定あんの?」
「と、特には……」
高校の女友達で誕生日を知っていて、お祝いをしてくれる人なんていないし、中学までの友達とも、学校の違う今、わざわざ誕生日に会うなんてことはしない。
「じゃあ空けといて。礼央も亜貴も翔太もお祝いがしたいって。」
「えっ!そんなの悪い!」
みんなが忙しいのを知っている。バンドの練習にバイトに塾に。だから、わざわざ自分のために時間を作ってもらうなんて申し訳ない。
「こっちが勝手に誘ってるんだから、桜が気にする必要ないだろ。」
「……。」
「てか、そう言う大事なことはちゃんと言えよ。成海が教えてくれなかったら、全然知らなかったし。」
……大事なこと……そんなふうに思ってくれることだけでもう十分なのに……
「もし行きたいところとか、やりたいこととかあったら、あとでメッセージ送って。」
「えっ?」
「桜の誕生日なんだから、桜のしたいことをしよう。」
「じゃあ、考えて連絡する。」
十分なのにこの人は、いつもそれ以上のものを私にくれるのだ。
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