プロローグ

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菫が仕度を整えてからリビングに行くと、既に桜が食卓に朝ご飯を用意してくれていた。いつもなら桜の方が仕度に時間がかかる。メイクも念入りだし、ヘアアレンジをしたりもするからだ。 「今日は早いのね。」 「あ、菫ちゃん、おはよう。何かね、早く目が覚めちゃって。」 そう言いながら、桜はリビングのソファーでくつろぐ神谷家のペット、黒猫のくろに餌と水の用意をしている。 くろは桜が去年の冬に拾ってきた猫だ。拾ってきた経緯を桜ははっきりとは教えてくれなかったが、同級生の宮田成海とも知り合いの猫ではあるそうだ。最初は反対していた母親も、今ではすっかりくろの虜で、看護師の仕事から帰ってきたら一番にくろに「ただいま。」を言っている。 「くろ、今日からお留守番、よろしくね。」 菫がくろの喉元をなでると、くろは嬉しそうに喉をゴロゴロと鳴らした。くろは菫にもよく懐き、菫が自室で勉強をしていると、ドアの隙間から中に入ってきて、膝の上に乗ってくることも多かった。
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