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「ありがとう。またお礼をさせてね。」
「お礼してくれるの?」
丈はにたりと笑って、ぐいっと桜に自分の顔を寄せた。
「じゃあ、付き合ってよ。」
「へっ?」
「あのクール野郎より俺の方が絶対にいい男だと思うけど。」
「……。」
この人の付き合っては、どこまでが本気なのか……。女の子の友達がたくさんいるのも学校では有名な話だし、他校の子が校門の前で待っていたりすることもあるらしい。
「桜ちゃんさ、俺のこと軽い男だと思ってるみたいだけど、至って健全だよ。むしろ、あいつの方が今までにかなりの女の子を泣かせてると思うけど。」
丈が好き勝手話すものだから、桜はどう答えていいのかも分からずに目を泳がせた。クール野郎もあいつも安藤くんのことだ。でも……女の子を泣かしているってどういうこと?
「今年はあいつ目当ての一年がたくさん軽音部に入部したって……」
「丈!」
さすがに喋りすぎだと思った猛が丈の脇腹を小突いた。
「痛っ。何だよ?」
「本人がいないところで、人の過去をベラベラ話すなって言ってんの。」
成海が注意すると、丈は鋭い視線を成海に投げやった。
「成海も話されたら困ることが山のようにあるもんね。大切なすーちゃんに。」
ダメだ。この雰囲気。明らかに宮田くんの顔が曇っている。曇っているだけじゃない。彼がこんなに冷徹な表情をするんだって……
「あの!」
桜は机をバンと叩いて立ち上がった。
「プレゼントありがとう。お礼は付き合う以外で何か考えとくから!」
今、この話題を断ち切れるのは自分しかいない。佐伯くんにいつまでも引っ張らせないためにも。不安気な顔をしている場合じゃない。
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