桜 お守りに欲しいの

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放課後に真尋が自分の席まで迎えに来てくれて、ようやく桜の嫉妬の気持ちは落ち着いた。自分が今、こうやって安藤くんと過ごせているのだから、それ以上のことを望んだらダメだ。好きになって欲しいとか彼女になりたいとか、そんなことを思ってはいけない。 「帰ろう。」 桜と真尋のツーショットに、教室の視線が一瞬にして注がれるが、真尋にはどうでもいいことのようだった。桜の帰り支度ができるのを嫌そうな顔もせず待っていてくれる。 「礼央が校門のところで待ってるって。」 桜と真尋、どちらともなく教室を出て下駄箱に向かった。 「えっ?礼央が?」 「桜の誕生日、どこかの店を予約しようかなとも思ったけど、みんなで鍋とかの方が楽しいかなと思って。良かった?」 「うん!それがいい!」 みんなで食卓を囲んで、話をして声を上げて笑って、そんな関係が今はとても心地良い。 「そう言うと思って礼央を呼んでおいたの。三人で買い出しに行こうと思って。翔太と亜貴はバイトと塾が終わったら合流するって。桜の好きな具材を買おう。」 「ありがとう!今からすごく楽しみ。」 そう桜が顔に笑顔を咲かすと、真尋の手が優しく桜の頭をなでた。その触れる手の感触が桜の心を満たして包んでくれる。
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