桜 お守りに欲しいの

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校門の横の植え込みに礼央は腰掛けていた。黒いガウチョパンツに白いゆったりめのトレーナー。そして緑色の髪をした礼央は、その場所では明らかに異質だった。下校中の生徒がみな同じように礼央をチラリと見ていた。 「お疲れ様ー。さっき職質されたよ。」 本人はいたって気にしておらず、桜と真尋にひらひらと手を振っている。 「職質って誰に?」 真尋が怪訝な顔をすると、礼央はうーんと少し考えるように唸った。 「ここの学校の先生。生徒指導部って顔つきの人。」 「浅間先生のことじゃない?グレーのジャージを着てた?」 桜が尋ねると礼央は「それ!」と言って、左の掌に右手の拳を打った。 「君はここで何をしてる?って聞かれたから、友達を待っていますって言ったら、学校は?ってさらに聞かれたから、詳しい自分のことを話したらちょっと仲良くなっちゃった。」 礼央はぴょんと植え込みから地面に降りた。 「バンド、頑張ってねだって。」 「純ちゃんにそこまで話したのかよ。」 真尋は若干呆れたように溜息をついた。
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