桜 お守りに欲しいの

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❇︎❇︎❇︎❇︎ 撃沈したことを全身で表すように、礼央はスーパーのカートに前のめりに寄りかかっている。 「諦めろ。あいつらはそういうやつだ。」 真尋はそんな礼央を適当にあしらいながら、カートに白菜や白滝、豚肉などの鍋の材料を放り込んでいく。 [俺は桜の作った雑炊が食べたい。] それが翔太と亜貴からの返事だった。二人ともまるで示し合わせたかのように、一言一句同じ言葉で返してきた。 「俺だって桜の雑炊、食べたいよ。でも、うどんは譲れない!」 「じゃあ、うどんもラーメンも入れて食べてから、最後に雑炊にしよう!」 あまりにも礼央が落ち込むものだから、桜は放って置けなくて、カートにうどんとラーメンを入れた。 「もうなんでもありだな。」 真尋は苦笑しつつも、桜の提案を受け入れてくれる。そういうところが桜にはすごく安心できた。 桜ちゃんは自分たちの意見に従ったら大丈夫だからというタイプの人が周りには多かった。だから、次第に自分の思いを口にすることはなくなり、思いすら持たなくなっていた。でも、安藤くんは言ってくれた。黙って後ろを付いて行くより、言いたいことを言っている方が良いと。
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