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みんなで思うままに話をしながら、鍋と雑炊を食べた後に、桜にサプライズが待っていた。ホールのショートケーキとプレゼントだ。ケーキは亜貴と翔太がここに来るまでに用意してくれ、プレゼントは4人で相談して決めたとのことだった。
「えっ!?嘘?だって……」
こうやってお祝いしてくれたことだけで、もう十分なのに。ケーキやプレゼントまで用意してもらうなんて。
「ぜひ開けてみて。」
礼央に促されて、桜は15センチ四方の箱の紙包みを破かないように丁寧に剥いだ。
「これ……」
中に入っていた物に、桜は数秒固まりその次には声を荒げていた。
「ダメだよ!」
メタリック系のローズ色のヘッドホン。先日、自分がヘッドホンのことが気になっていたのを、安藤くんは覚えてくれていて、みんなにプレゼントとしてどうかと提案してくれたのだろう。
「何?好みじゃなかった?」
申し訳なさそうな表情の真尋に、桜はとれるのではないかと言うぐらいに、激しく首を振った。
「違う!こんな高い物をもらえないの!」
あの日真尋と話した後、桜はヘッドホンの相場を調べたのだ。だからそんなにぽんぽんと買える物じゃないのも把握している。
「えっ?そんなこと?俺ら4人からだし。」
真尋の言葉に礼央も亜貴も翔太も頷いている。
「真尋がね、桜のことを思って選んだんだよ。音が耳に届きやすくて、桜に似合う色で探してくれたの。」
「……。」
礼央の言葉に桜はこれ以上「ダメ」や「もらえない」なんて言えなかった。
「大事に使う。本当にありがとう。」
自分のことを考えてくれたこと、話をした日のことを覚えていてくれたこと、悩んで選んでくれたこと、その全てが胸が苦しくなるぐらいに嬉しかった。
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