桜 お守りに欲しいの

35/37
461人が本棚に入れています
本棚に追加
/642ページ
真尋のキョトンとした顔と目があったかと思うと、いやいやと言いたげに真尋は首を振った。 「ピックのこと言ってる?ないない!あんなの消耗品だし、たいした値段もしないし、誕生日じゃなくてもあげるよ。」 「やだ。安藤くんが今使っているものが欲しい。」 「はぁ……あんた、一回言い出すと頑固だからなぁ……。ちょっと待ってろ。」 真尋は桜の頭を優しくなでると、自室のデスクに向かい、引き出しをガタガタと開けた。 「今使っているやつだと、若干削れてるけどいいの?」 「うん。それがいいの。だってお守りにするから。」 「お守り!?だったらやっぱりもっといいもの……」 「いいの。これ以外はいらない。」 「まあ、桜が欲しいものをあげたいって言ったのは俺だしなぁ……。」 真尋が桜の掌にピックを置いてくれたので、桜はきゅっとそれを握りしめた。ギターと同じ色の朱色のピック。これを見たら、安藤くんが頑張ってる姿を思い出せるから。自分もしっかりしようって、泣き言なんて言わないって思えるから。
/642ページ

最初のコメントを投稿しよう!