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真尋のキョトンとした顔と目があったかと思うと、いやいやと言いたげに真尋は首を振った。
「ピックのこと言ってる?ないない!あんなの消耗品だし、たいした値段もしないし、誕生日じゃなくてもあげるよ。」
「やだ。安藤くんが今使っているものが欲しい。」
「はぁ……あんた、一回言い出すと頑固だからなぁ……。ちょっと待ってろ。」
真尋は桜の頭を優しくなでると、自室のデスクに向かい、引き出しをガタガタと開けた。
「今使っているやつだと、若干削れてるけどいいの?」
「うん。それがいいの。だってお守りにするから。」
「お守り!?だったらやっぱりもっといいもの……」
「いいの。これ以外はいらない。」
「まあ、桜が欲しいものをあげたいって言ったのは俺だしなぁ……。」
真尋が桜の掌にピックを置いてくれたので、桜はきゅっとそれを握りしめた。ギターと同じ色の朱色のピック。これを見たら、安藤くんが頑張ってる姿を思い出せるから。自分もしっかりしようって、泣き言なんて言わないって思えるから。
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