桜 お守りに欲しいの

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何となくもう少し一緒にいたいと思ってくれたのだろうか。真尋がベッドの縁に腰かけたので、桜も隣に腰を下ろした。 「ねぇ……安藤くんの誕生日はいつ?」 「俺?10月。」 「何日?」 「12日。」 「お祝いしようね!お祝い!私、ケーキ焼くよ。」 「そんなのいいよ。ガラでもない。」 真尋が拒否反応を示すので、桜は「えーっ!」と不満を漏らした。自分はこんなに盛大にお祝いしてもらったのに、させてはくれないだなんて。 「俺がさ、ケーキのロウソクの火を消す姿とか想像できる?」 言われて、頭の中で思い描いて、桜は申し訳ないと思いながらも吹き出してしまった。確かに浮かれながらロウソクの火を消す安藤くんは、最早安藤くんではない。 「桜、笑いすぎ。」 真尋は笑いの止まらない桜に、穏やかな笑みを向けると桜の髪に触れた。そして、桜の髪をもて遊ぶように指先に毛先を絡ませる。それだけのこと。それだけのことでも、桜の心臓は痺れてぴんっと背筋を伸ばしてしまう。
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