菫 一緒にいたいの

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リビングで菫は桜に髪を結ってもらった。サイドの髪を編み込みにして、後ろでひとつに束ねてくれた。 「菫ちゃんのそのブレスレット可愛いね。」 「あ、これ……」 可愛いと言われたブレスレットは成海からもらったものだ。もらったあの日からほぼ毎日手首につけている。 学校でのアクセサリーは禁止されてはいるが、今はまだカッターシャツのシーズンなので隠すことができた。成海がくれたことが、似合うと思うよと言ってくれたのが嬉しくて、いつもつい手首に通してしまっている。もちろん成海にはこのことは恥ずかし過ぎて秘密だ。 「完璧。そしたら出かけようか。今日は洋服見るんだよね。」 最後に桜は菫の髪にヘアバンドをつけてくれた。相変わらず器用だなぁと菫は染み染みと思う。自分にはこんなことできない。料理だって時々、桜の手伝いをするが、手順を覚えるのに必死で手際は一向に良くならない。 あー……。なぜだろうか。以前なら家庭的なことに興味すら持たなかった。陸上で走っていることだけで充分の毎日だった。なのに今は、家庭的な女の子になりたいって気持ちがほんの少し沸いている。成海にご飯とかお菓子を作って、「美味しい」って言ってもらいたいなとか。何でそんなことを思うのかは自分でも不明だ。
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