菫 一緒にいたいの

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結局着こなす自信もないのに、菫は桜と店員に押されて、ブラウスとスカートを購入した。桜は悩んだ挙句、ピンヒールのレモンイエローのパンプスを一足だけ購入していた。 「菫ちゃん……」 店を出たところで、桜が一瞬躊躇いつつも、菫を呼び止めた。 「宮田くんはいつでも菫ちゃんに会いたいと思っているよ。」 「はいっ!?」 いきなり何を言い出すのかと、菫は持っていた服屋の紙袋を落としそうになった。いつでも会いたいって…… 「私、分かるもん。」 それは以前、桜が好きだった人だから?それとも… … 「私と宮田くんは似てるから。好きな人とはたくさんのことを話したいって思うし、会えるものならいつでも、会えたらいいのにって思う。でも、そんなこと言えないっていうのも分かっている。壊したくないから。その人が作り上げてきたものを。だから、自分がその人に追いつきたいって思うの。」 言うだけ言うと桜は顔を赤らめて、足早にパフェを食べに行く予定にしていたカフェへと歩き出した。その後ろ姿に、菫はひとつ決意をしていた。 今夜、安藤くんに連絡を送ろう。桜に怒られてもいいや。連絡をすればきっと安藤くんは桜を連れ出してくれる。誕生日の日の桜の表情が全てだった。「お泊りに行くの。」と言って笑った桜は、心の底から幸せそうだった。
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