菫 一緒にいたいの

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菫がグラウンドを横切って部室に行こうとしたら、 「先輩、遅かったですね。」 アップを終えた木下春樹が走り寄ってきた。 「……文化祭の話し合いがあったから。」 菫が急いでいることもあり、春樹の方を良く見ずに返事をしたら、ぱっと手首を取られた。 「先輩、最近、冷たいですよね。」 「な、何が?」 木下、背伸びた?菫が見上げると、自分より10センチは背の高い男の子がそこにいた。最後に彼に会ったのは、自分の卒業式の時だ。それから1年間は空白の時がある。 「学校にアクセサリーは禁止じゃないんですか?」 春樹がつかんだ菫の手首には成海からもらったブレスレットがつけられている。 「急に何?あんただって、ガチガチに校則を守るタイプじゃないでしょ。」 菫はなるべく乱暴にはならないようにして、春樹の手から自分の手首を振りほどいた。 「宮田さんにもらったんですか?」 「……。」 「相変わらずやり手な男ですよねぇ。どうすれば女の子が喜ぶか全部分かってやってるんだから。」 「何のこと?あんた何がいいたいの?」 淡々とした口調だが、春樹の話し方は明らかに成海を好いていない人の話し方だった。
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