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春樹は靴の先で地面をトントンと軽く蹴った。
「俺のクラスにいるんですよ。宮田さんと同じ学校の出身だった子が一人。あの顔を武器に女の子を取っ替え引っ替えしてたって。当時はバレーボールでも有名だったし、取り巻きの子も一杯いたみたいですしねぇ。」
成海にそういう過去があることを、菫だってぼんやりではあるが気付いてはいた。だけど、深くは掘り下げたくないというか、聞き出したくないというか。
「先輩もいずれ泣かされますよ。もういらないって言われて。」
「……私、着替えてくる。」
どうして今、木下はそんなことを言うの?菫はモヤモヤとした思いを抱えたまま、春樹の横を通り過ぎて部室に向かった。
多分、彼は成海を好いてはいないが、木下と成海の接点が見つからない。木下は理由もなく人を毛嫌いするタイプじゃない。
「あー……気が重い。」
とりあえず走り込もう。走って走って走り続けたら、大抵の悩みは幾分軽くなる。
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