菫 一緒にいたいの

13/58
前へ
/642ページ
次へ
菫は理沙にお願いをして、今日はいつもより走る本数を増やしてメニューを組んでもらった。 「大会が近付いてきたから意気込んでるの?」 と芽衣に冷やかされたが、菫は曖昧な笑みで交わしておいた。大会も関係ないことはないが、木下の言葉が脳裏にガンガンと響いて、頭痛を起こしそうな気さえした。 成海にいつか「もういらない。」って言われる日が来るのだろうか。他に好きな女の子ができたからとか。そうしたら私はどうするのだろうか。 よくよく考えたら、私は成海の過去を詳しく知らない。出会った時には今の成海だった。誰にでも優しくて、愛想が良くて、若干チャラいのは否めないけど、でも憎めないやつ。 「神谷さーん、ボールとって。」 「えっ?」 菫が我に返って足元を見ると、サッカーボールが転がっていた。グラウンドの中心から猛がこっちに向かって走って来る。 「お疲れ様……。」 菫はサッカーボールを拾い上げて、自分から猛に歩み寄ってボールを手渡しした。 「どうしたの?浮かない顔して。」 「浮かない顔?」 「うん。元気なさげな感じ。」 松田くんって……ずっと成海と同じ学校なんだっけ。きっと成海のことなら何でも知っているだろう。
/642ページ

最初のコメントを投稿しよう!

482人が本棚に入れています
本棚に追加