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菫は理沙にお願いをして、今日はいつもより走る本数を増やしてメニューを組んでもらった。
「大会が近付いてきたから意気込んでるの?」
と芽衣に冷やかされたが、菫は曖昧な笑みで交わしておいた。大会も関係ないことはないが、木下の言葉が脳裏にガンガンと響いて、頭痛を起こしそうな気さえした。
成海にいつか「もういらない。」って言われる日が来るのだろうか。他に好きな女の子ができたからとか。そうしたら私はどうするのだろうか。
よくよく考えたら、私は成海の過去を詳しく知らない。出会った時には今の成海だった。誰にでも優しくて、愛想が良くて、若干チャラいのは否めないけど、でも憎めないやつ。
「神谷さーん、ボールとって。」
「えっ?」
菫が我に返って足元を見ると、サッカーボールが転がっていた。グラウンドの中心から猛がこっちに向かって走って来る。
「お疲れ様……。」
菫はサッカーボールを拾い上げて、自分から猛に歩み寄ってボールを手渡しした。
「どうしたの?浮かない顔して。」
「浮かない顔?」
「うん。元気なさげな感じ。」
松田くんって……ずっと成海と同じ学校なんだっけ。きっと成海のことなら何でも知っているだろう。
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