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「木下の言っていたこと、当たってるんじゃないの?」
菫の背中を追いかけるように、芽衣の高い声が飛んできて歩みを止めた。
「男の子に囲まれて、毎日楽しそうだもんね。気持ちが陸上より恋愛に向いてるんじゃないの?」
「何それ?」
聞き捨てられなくて、売られた喧嘩からメソメソと逃げるタイプでもなくて、菫は芽衣の方にズカズカと歩み寄った。
「藤澤くんと宮田くんと三人で宿題をしたり、隣の席の優くんに誘われてラーメンを食べに行ったりもしてるし。」
「それは断る理由もないから。」
「でも、一緒にいて楽しいって思っているんでしょ?」
何それ。楽しいって思ったらいけないのだろうか?この人達といるのはつまらないと、自分に思い込ませでもするの?
「楽しいって思って何が悪いの?」
「ほら、そういうところ。男の子とつるむなんて菫らしくないから、タイムに影響が出るんじゃないのって言っているの。」
「何それ……」
私らしいって?芽衣に何が分かるっていうの?腰の横で握った拳が震えていた。言われっぱなしなんて納得がいかない。
「あー!ストップ!ストップ!」
睨み合う二人の間を裂くように、マネージャーの理沙がぐいっと菫の腕をとったので、菫は我に返って今の状況を客観的に見つめ直した。
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