満月の夜の

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 修学旅行の三日目。その夜だった。  行き先は札幌。  一日目と二日目はスキー実習。三日目は自由行動。四日目に帰宅というスケジュールであった。  楽しいはずの修学旅行。しかし僕は楽しむことが出来なかった。  この時の僕にはやるべきことがあったからだ。  ずっと考えていたこと。  ずっとやろうとしてできなかったこと。  ずっと先延ばしにしてきたこと  ここしかない。それをこの修学旅行中にやろう、そう僕は意気込んでいた。 (どうしよう。大丈夫だろうか)  心臓の動きが早い。  呼吸が苦しい。  僕はこれまでの人生で感じたことのないほど緊張していた。  だがこれからしようとしていることを考えれば、それも無理はない。 「結花……」  僕には好きな人がいる。  ――そう、僕はこれから告白しようとしていた。  その相手の名前は橘結花。高校ではクラスメイトだ。  彼女との出会いは高校からではなく、小学生の頃からの付き合いである。  僕と彼女ともう一人。その三人でよく遊ぶことが多かった。  その頃からだ。たしかに僕は彼女を意識していた。  中学に入ってからは、一緒に遊んだりすることは無くなったが、教室などで話したりはしていた。  そんな彼女に僕は告白しようとしていた。  ――後方から足音。 「お姉ちゃんに言われてきたんだけど…………どうしたの、こんなところで」  待っていた人。  振り向くと、そこに彼女がいた。
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