01 プロローグ:オトコ と オンナ

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01 プロローグ:オトコ と オンナ

「ようこそ、私の夜会へ。御名(みな)クン、一砂(かずさ)クン──」  その美しいひとは、紫色の光沢を放つ黒いナイトドレスに身を包み、頬にほんのりと赤みをさして、濡れたような瞳をわずかに細めた。    複雑な模様を描きつつ、それでいて必要以上に存在を誇示しないカーペット、上品で洗練された調度類、巧妙に配置された間接照明。部屋の中央にでんと居座る、極度に抽象的な造形を持つ奇っ怪なオブジェすら、ある意思の元に計算され尽くした完璧な統一感に支配されている。  何もかもがツルツルで、ピカピカで、一介の貧乏大学生には想像もつかなかった世界が、そこにあった。  ──ここは、異界だ。  その異界の王たる乙木(おとぎ)伊織(いおり)さんは、豪奢なソファーにしどけなく身を預けながらも、その風格に微塵の揺らぎもなく、間抜けにもドアから半歩の所で硬直したままの哀れな来訪者たちに向けて、魅力的に小首を傾げた。 「どうしたの? さあ、パーティーを始めましょう」     
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