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画面には、大通りの先に止まっている白いワゴン車を写している。
ワゴン車の前方は大きくへこみ、周りには交通整理の警官が誘導をしていた。
俊夫「うわー、事故ったのか、ひどい事故だな。」
陽菜子「ここ、うちの近くだ。」
俊夫「え?本当に?」
陽菜子「うん、ここの通り、いつも歩いてる・・・」
俊夫「俺といて良かったな、家に帰ってたら巻き込まれてたかも、」
陽菜子「調子のいいこと言って・・・じゃあ、行くね。」
陽菜子は立ち上がり、玄関に向かった。
俊夫「なあ、また連絡するよ。」
陽菜子「その前に、今の彼女を早く清算してよね。」
俊夫「わかったよ、そっちが済んだら、すぐに会いに行くから・・・・」
陽菜子「はいはい、遅刻しないでよね、じゃ。」
陽菜子は玄関のドアを閉め、マンションのエントランスに向かった。
陽菜子が廊下を歩いていると、目の前に違和感を覚える。
・・・・・柵?
それは、
工事現場で見かける、
脚が四本ある、
大型犬ほどの大きさの柵が、
廊下で陽菜子の行く手を遮るように設置されていた。
何だろ?これ?
陽菜子が疑問を持ったのは、柵の先だけではなく、柵そのものにも気になることがあった。
工事現場の柵は、黒とオレンジの二色であるが、
廊下の柵は大きさはほぼ同じものの、赤と白の二色が交互に配色されている。
こんな色の柵見たこと無い・・・・・何を注意しろっていうの?
陽菜子は柵に近づくと、辺りを見渡した。
・・・・・おかしなところはない。
陽菜子は首を傾げながら柵を通り過ぎ、エレベーターの入口へと向かった。
危ない!
頭上から叫び声が響き、陽菜子は咄嗟に一歩後ろに下がった。
陽菜子の目の前に大きな音が鳴り、気がつくと鉄製の脚立が陽菜子の足元を塞いでいた。
「すみません!手を滑らせてしまって・・・」
気がつくと、エレベーター横の階段から作業服を着た男が急いで駆け下りてきていた。
「本当にすみません!」
陽菜子は呆然とした。
もう一歩、歩くのが早かったら、階段から滑り落ちてきた脚立と衝突していた。
そうか、あの柵は工事するから・・・・
「あの、大丈夫ですか?」
脚立を見つめていた陽菜子は我に返り、男に向かって何度もお辞儀をした。
陽菜子「す、すみません!こちらこそ柵を無視しちゃって・・・・」
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