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「柵?・・・柵なんて立ててませんけど・・・・」
陽菜子「え?だってあそこに・・・・」
陽菜子は歩いてきた廊下を指差した。
・・・・って、あれ?
陽菜子が指した先は、延々と続く廊下がそこにあった。
柵が・・・・ない?
さっきまで、そこにあったのに・・・・
陽菜子「さっき、そこにありましたよね、柵。」
「いや、私が通った時には、何もありませんでしたけど・・・」
陽菜子「ええ?何で?・・・・あ、あそこに赤と白の・・・・」
「あの、本当に大丈夫ですか?」
・・・・どういう意味よ?
陽菜子「大丈夫です、失礼します。」
陽菜子は男を睨みつけ、脚立をまたいでエレベーターの中に入って行った。
確かに見たんだけどな、柵。
二時間後、陽菜子は都内にある、自身の勤める会社に向かっていた。
地下鉄の地上出口から、大勢の人間が外に歩き出している。
オフィス街とあって、皆同じ方向に足並みを揃えて歩く中、一人の女性が間をすり抜けるように走っていた。
まずい!遅刻する・・・・
陽菜子は人の間を通り抜け、会社まで数十メートルの交差点まで差し掛かっていた。
大勢の人間が信号機の前で立ち止まっている。陽菜子はさらに前に進むと、横断歩道の前に違和感のある『それ』が、そこにあった。
あれ?・・・・ここにも。
赤と白の、斜めの線が入った柵。
1メートル幅の柵が横に二つ。
まるで、人々の流れを遮断するように、堂々と置かれていた。
なんで・・・・この先に何かあんの?
陽菜子は思わず、柵の前で立ち止った。
辺りを見回した陽菜子は、さらに不可解なことに気がついた。
誰も、柵を見てない・・・・・
横断歩道に立ち止まった人の流れは、柵を無視するように視線を逸らし、柵の前まで進んでいた。
陽菜子を通過する人間も柵を一切目に留めていない。
・・・・大丈夫かな・・・・
陽菜子も続いて柵を過ぎようとした。
しかし・・・・
朝、マンションで遭遇した柵の先の出来事・・・
・・・・やっぱり気になる。
陽菜子は柵を通過せず、横の横断歩道を渡り始めた。
馬鹿馬鹿しい、遠回りまでして・・・・
陽菜子が渡った先に、一人の女性が立ち止まっていた。
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