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「おーい、いるか? 帰ろう……って、寝てるのか」
田舎街の学校。年季のはいった、木造校舎の教室。
窓から注ぐ春の日だまりで、眼鏡を掛けた少女は、机に突っ伏して、すうすうと寝息をたてていた。
俺はそろそろとそこに近づき、その机の前の席を借りて、音をたてないように気を付けて座る。
いつもなら、彼女は俺が部活を終えるまで、本を読みながら待っている。こんなふうに、眠っているのは珍しい。というか、初めて見た。
待ちくたびれたのだろうか?
田舎故に、一度バスを逃すと次のバスまで最低1時間以上待たなければならない。だから、早く起こした方がいいのは自明の理。
けれど彼女はぐっすり眠っている。理知的ないつもの姿からは想像できない、無防備な寝顔を晒して、すやすやと眠っている。
こんな彼女を今すぐ起こすのは、悪い気がする。安眠妨害は罪深い。だからしばらく寝かせてあげよう。
その間、初めて見るこの無防備な寝顔をじっくりと眺めて過ごすことにしよう。
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