とある春の、とある学校にて――

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◇  飽きた。  別に彼女を嫌いになったとかそういうわけではない。彼女は可愛いし、その寝顔も当然のごとく可愛い。  ただ、俺は彼女が好きなのであって、彼女の顔自体が好きなのではない。だから、寝顔を静かに眺めてることに飽きた。  けれど、もうバスはいってしまったし、次来るのは大分後だ。    暇であるので、机の上にあった、彼女が読んでいたらしい文庫本を手に取ってみる。  ブックカバーをとって、小説の題名を見てみると、それは、あの夏に彼女が読んでいた小説と、同じシリーズのものだった。  俺と彼女が晴れて今の関係になったきっかけの小説とは、感慨深い。内容が気になったので、しおりの挟んであるページ━━彼女が読んでいた部分を開いてみた。
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