2人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし夫の言葉が嘘ではないとわかるのに、それほどの時間はかかりませんでした。夫は竹を取りに行くたびに、竹から出てきたという金や宝石を持って帰り、赤ん坊はまたたく間に成長して美しい少女になりました。
「本当に、竹から生まれたんですね……」
引っ越した先の大きな屋敷の縁側で、使用人が手入れをする広い庭を眺めながら、妻はやっと納得の言葉をもらしました。彼女はもう職人のおかみさんではなく、まるで貴族の奥方でした。
妻は少女を可愛がりました。きれいな着物を何着もあつらえて、日に何度も着替えさせたり習い事をさせたりしました。少女はどこの子よりも物腰が優雅で器用で賢かったため、何をさせても注目の的です。妻は少女を連れて歩くのが何よりの楽しみになりました。
「おまえはお母さんの自慢ですよ」
母は娘が何か、うまくできたり人を喜ばせたりしたときには、決まってそう言ったものです。
夫はときどきそれをからかいました。
「自慢にならないような子どもは、あなたはいらないんでしょうね」
夫はまた「娘はお金をかけなくてもきれいだが、あなたのきれいにはお金がかかる」とも言いました。妻は竹から出てきた宝の一部を使って、それまで我慢していた高い化粧品や着物を買っていたからです。
そんな皮肉を言われるたびに、妻は夫への愛情と関心がなくなっていくのを感じました。しかし問題はありません。ずっと欲しかった子どもと財産を手に入れたのです。職人の夫は工房に籠っていてくれれば十分でした。
それから人を伝って高名な人物に頼み、娘に「なよ竹のかぐや姫」という名前をつけてもらいました。
最初のコメントを投稿しよう!