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かぐや姫が年頃になると、道を行く男性が全員、足を止めて彼女に見惚れるようになりました。気を取られるあまり、生け垣にぶつかったり、担いでいた荷物を取り落とす人も珍しくありません。かぐや姫はあまり屋敷から出なくなりました。
すると今度は屋敷の周りに見物客が集まるようになりました。女性も小さな子どももいます。屋敷の周りには出店ができて、いつもお花見のようでした。かぐや姫は奥の座敷に引っ込んで、外へは顔も出さないようになりました。
「いいかげんにしてください。うちの子は見世物ではありませんよ」
苦々しく思った母はある日、集まった人たちに言いました。日に日に元気をなくしていくかぐや姫を気遣ったのです。みんなは彼女を見てわっと喜びました。
――これが噂のかぐや姫の母親か。
――この美人の娘なら、さぞ輝くような美少女だろうよ。
遠まわしな自分への賛美を耳にして、母ははっとしました。急に若い頃の気持ちが蘇りました。ずっと忘れていた、満ち足りた気分でした。
それからもかぐや姫は姿を見せませんでしたが、噂が噂を呼び、ついには名のある貴人が結婚を申し入れてきました。身分の違いに戸惑った母は、ろくに相手の顔を見ることも、口を利くこともできずに、ひたすら平身低頭して断りました。
同じことはまた繰り返されました。二度三度と重なるうち、気が緩んでつい「どこそこの誰それ様にも申し込まれているのですが……」と言ってしまいます。それを聞くと相手は躍起になって、諦めるどころかしつこく訪ねてくるようになりました。
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