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「困ったものだわ」と母は愚痴りましたが、実のところは嬉しかったのです。求婚者は皆、まずは彼女の気に入られようと一生懸命、彼女のご機嫌取りをしましたから。
そのあいだにもかぐや姫は日に日にきれいになり、そして塞ぎ込んでいきました。嬉しそうにその日の報告をしに来る母に、かぐや姫は小さく呟きます。
「お母さん、私はもうじき月に帰ります……」
初めて聞いたときはどれほど驚いたことでしょう。母は娘の手を取り、頬を撫で、肩をゆすって、それは嘘だと言わせようとしました。今ではすっかり慣れっこです。
「はいはい、知っていますよ。今日はね……」母はどの求婚者がどんな風にやってきて、何をくれ、何を言ったかを楽しそうに語りました。彼女はまるで自分が求婚されている若い娘のようでした。
かぐや姫の話を信じていないわけではありません。求婚者が足しげく通ってくれるのは姫がいるあいだだけとわかっているから、夢中なのです。
この日も彼女は五人の求婚者について熱っぽく語りました。「毎日しつこくて困る」と言いつつ、実際には自分で招いているようなものです。五人はそれぞれ身分の高いお金持ちで、年齢と雰囲気が少しずつ異なりました。
結婚をする気もなければ顔を見たこともないかぐや姫は、話を聞いても少しも興味をひかれません。しかし母は気が済むまで一人でしゃべり続けます。かぐや姫はただ、黙って聞いているだけです。母はそんな娘を、いつでもちゃんと自分の話を聞いてくれるいい子だと思っていました。
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