せんぱい

3/14
前へ
/14ページ
次へ
 2階に降りてみようと焦ったまま階段に向かっていると  「おわっ!危ない!」  誰かにぶつかって前に進もうとしていた速さで後ろに押されてバランスを崩した。  息を飲んで思い切り尻餅。何が起きたのか解らない状況に痛いという言葉さえ出てこない。  「ラッキースケベだな」  ???  低い声が俯いていた頭の上からして、思い切り顔を上げると、近すぎる顔に咄嗟に顔を下げた。  スカートを掴んでる指先が見えてまた焦る。指を引き離すように開いていた足の間を抑える。  恥ずかしさに真っ赤になっている顔と、上がり過ぎる体温に心臓が壊れそうなほど音をたて痛い。  「太ももバッチリ」  楽しそうな声の後、大きな手に肩を掴まれ浮遊感に息を飲んだ。  「あーあ、おでこ赤くなっちゃったね」  クスクスと笑われ指先で撫でられた。  勢いよくおでこを掌で隠す。上げる事の出来ない目の前にはブルーグレーのチェック。  ネクタイの色に3年生だと教えられる。  「コンピュータールームに行きたい迷子の一年生でしょ」  えっ…なんで…?  上がった顔を覗き込まれて  「ははっ、正解。何人か見たんだよね。探してる子たち」  大丈夫です。って言うのに、良いから着いておいで。と先に歩き出した先輩の後を小走りで追いかけた。  どこをどう歩いたのか解らないまま  「はい、ここがコンピュータールーム」  開いたままの扉の前で軽く背中を押された。  お礼を言うために振り向くと、始業のチャイムがなって体が跳ねる。  あっ…先輩、遅刻…  焦る私に、背中を向けた先輩は顔だけをこちらに向けて、ヒラヒラと手を振りながら肩越しにニッコリ笑って歩いていった。  授業が始まるとやっと色々落ち着いてくる。  ………。  私…ヤバくない?  お礼も言ってないよ…先輩に…  落ち着いた心臓がまた速くなる。  どーしよう…顔…覚えてない…。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加